文芸的な、あまりに文芸的な

人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っている(谷川俊太郎)

ぼくの精神病院入院日記  その3

4月の終わりごろから2か月半ほど、精神病院に入院してました。

入院理由は、ストレスによる心因性の過剰水分摂取による水中毒でした。

入院中に暇つぶしに書いた日記を、忘備録として載せます。

 ※以下出てくる人名は、当然ながらすべて仮名です。

ぼくの精神病院入院日記 その1

ぼくの精神病院入院日記  その2

 

5月9日

・OT(作業療法)で映画「マクロス 愛・おぼえていますか」を観た。

この世代のおっさんからのリクエストらしい。

作業療法士さんに「マクロスなんて、おばあちゃんは観れんでしょ」と言ったが、「いろんな映画を見せるから、まぁ、大丈夫」とのこと。

で、実際に流してみると、案の定、おばあちゃんたちはポカーンとして脱落して寝てた。その中で、一人だけ最後まで観てたおばあちゃんがいた。エライ

・別の部屋にいたA木さん(40代前半)が、うちの部屋に移動してきた。なんでも「部屋で歌うのがやめられずに」クレームがついて、この部屋に移動してきたらしい。歌うのがやめられないって、へんな病状だな。というか、なぜこの部屋にうるさい人が集まってくるのか…。

A木さんは、勤めていた会社をメンタルやられて辞めて自分で会社をやっているそうだが(40そこそこで社長はすごいな)、会社が火の車らしい。財務整理で疲れて入院したという。入院1か月とのこと。

「よろしく」と挨拶されたが、正直歌うのはやめてほしいと思った。落ち着かない病状は理解できるが。

A木さんは看護師さんに「もう寝てなさい、これ以上騒ぐと拘束になっちゃうよ」と言われ、「注射はいやだー、注射はいやだー」と歌いながら横になっていた。

やっと点滴がとれた。5か目。やったー。

なので風呂に入れることになった。A木さんと風呂でいっしょになり、入院した経緯などを話した。

売店に買い物に行くために外出した。2度目の外出。

外出はまだひとりでできず、看護師さんのつきそいが必要だ。なので別の男性K田さんもいっしょに売店に行くという。K田さんのリクエストで、中庭グラウンドを1周回った。この病院には中庭グラウンドがあり、晴れている日はそこで散歩ができるのだ。

建物の外に出て(まだ院内だけど)歩くのは14日ぶりだ。

歩きながらナースさん(男性)に、「この仕事やって何年ですか?」ときくと、「4年目。准看護師は5年やった」とのこと。「大変ですか」ときくと、「まぁ、楽な仕事ではないですよね。楽な仕事はないでしょうから」とのこと。

5月10日

・晴れといっていたのに、朝から雨。しかも37.5℃の微熱が出た。父が見舞いに来る日だったが、雨で来ないとのこと。

見舞いがないので、将棋おばちゃんと午後、将棋さしてたら、父が見舞いに来た。「晴れたから来た」とのこと。将棋中だったので、父を病室に先に行かせて1時間も待たしてしまった。

・父の見舞い。鼻毛切り(はさみ。院内には持ち込みが厳しい)を持って来てもらって、3週間ぶりに鼻毛を切り、眉毛をそろえる。

その後持って来てもらったフルーツゼリーを食べ、2人でグラウンドに行き、何周か歩く。貴重な運動の時間だ。(まだ一人での外出はできないので)

4年ほど前、父がうつ病でこの病院に入院したことがある。そのとき私がつきそいで、一緒にこのグラウンドを散歩した。そのときはまさか、立場が逆になってここをまた歩くとは思わなかった。

・今日、先生の回診だということなので、10日ぶり(あいだにGWを挟んだので、長く空いてしまったのだ)に主治医の先生とお話しできると思ったら、初めての先生だった。回診は週に1回で、主治医とは違う先生がやるらしい。

「もう、外(院内のグラウンド)に一人で出てもいいですか?」ときいたら、

「水飲むかもしれないからダメ」とのこと。

「ラジオ持ち込んでもいいですか?」「主治医の先生にきいて」

主治医がいないと何も発展しない…。

入院して3週目、1か月くらいで退院できるかと思っていたが、それはどうやら無理っぽい。これ以上入院が長引くのか、と思うと憂鬱になった。

主治医の診察が今日あると、昨日きいたのだが、先生は結局来なかった。主治医が来ないせいで、入院が長引いているような気がする。

しかし、「水飲むかもしれない」と医者に言われると、本当に水飲みたくなる。まだ1日500mlまでなので、喉がかわいて仕方ないし。

・同室のA木さんが私の事を「田島さん」と間違って呼んでいたのだが、ついに私の名前を間違えずに呼ぶようになった。

A木さんはご両親がお見舞いにいらっしゃって、「税務署がどうこう」「破産がどうこう」などという話をしていて、やはり会社の経営は厳しいのだな、そりゃメンタルyられるわ、と思った。

・同室の拘束されたO木さんが、どっか別の病院に移った。ここでは治療しきれないらしい。うるさいのが一人減ってうれしいけど。

・目薬おばあちゃんという車椅子のおばあちゃんがいる。昼飯どきに、目薬さしてもらいたいのだが、目薬は朝晩の2回しかさせないので、「目薬指して。目薬指して」と連呼しながら眼を掻いてしまうので、指なし手袋されて手を拘束されてしまう。拘束されると「目薬させないのは不幸だ、目薬させないのは不幸だ」と連呼するので、不気味。

クロスワードパズルで、「『山の頂がつらなっている』って2文字で何?」とおっさんにきかれたので「『尾根』じゃないですか?」と答えた。

しばらくして「あれ、もしかして『尾瀬』じゃなかったか?」と思ったが、正解は尾根だった。

・新聞を病院に配達してもらってるおじさんがいる(もちろん自分の金で)。わざわざそんなことしてるのか(&こんなことできるのか)と感心した。しかも、読んだ新聞は、食堂に置いて誰でも読めるようにしてくれる。私は(他にすることがないので)よくこの新聞を読んでいる。

「このおじさんはきっと聡明なんだろうなぁ、新聞読んでいるから(あまりここで新聞読んでいる人はいないので)」と思っていた。

しかし今日ナースセンターで「病院早引けします」とおじさん、ナースさんが「ここは病院で、あなたは入院中なのだから、家には帰れません」というやりとりを見て、「ああ、やはりここは病院だなぁ、ここに居る人は調子悪いなぁ…」とあらためて感じた。

新聞を読めることと病状は関係ないらしい。

5月11日

・今朝は、ここに来て初めて3時間少し眠れた。今まで眠れても1時間半、多くは一睡もできなかったのに。昨日、父とグラウンドを散歩したのがよかったのだろう。

今朝方、「キム・ジョンウンクロスワードパズルする夢」を見た。南北首脳会談のニュースを連日観ていたことと、昨日OTでクロスワードパズルやっている人がいたから、見た夢だろう。

キム・ジョンウンクロスワードパズルで「ひらのあや」というミュージシャンの名前(声優の平野綾か。なぜかミュージシャンだと夢の中では思った)は書けていたが、「いつも」はわからずに私が教えてあげた。

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・先生がやってきて、調子いいので週末に外泊できると思うとのこと。週末(土日)ってあさってだけど。やった!

・同室の、自殺未遂入院の人が今日退院するらしい。私よりあとに入院してきたはずだけど。早いな。 退院うらやましい。

・OTでナンプレをやった。平日はOT(作業療法)があってなんだかんだヒマつぶしできる。休日はつまんないテレビでなんとかヒマつぶすしかない。

・昼飯時、看護実習生さんと少し話をした。大学4年生でここが実習4回目とのこと(実習は3年の後半からある)。ここではやってないが、メンタルでなく他の科の病院だと身体介助もやっていたそうだ。メンタルじゃ介助患者はそんなにいないからね。

・風呂に入ったら、女性実習生も風呂に入ってきた。実習生は1人の患者に付きっきりなので、その患者おっさんが風呂に入ったのだ。実習生は、そのおっさんや私がちんこ洗ってるのを見ながら、てきとーに世間話をしていた。

看護実習生にちんこ洗ってるの見られても当然ながら興奮なんてしない。むしろ見せつけたらどうなるのだろうとも思ったが、もちろんどーにもならないだろう。

・女性ナースさんとグラウンドを散歩。「疲れたー。暖かいからもう働くのメンドイ」と愚痴ってた。「2部屋(12人分)の患者記録を書かないといけないからおわんねー」とのこと。「大変ですねー」と私。女性とこーゆーどうでもいい会話をするのは久しぶりだ。

・アイスの許可が医師からおりたので、バニラ味の「クーリッシュ」を売店で買って食べた。半月ぶりのアイスクリ-ム。うんまい! と思わず声が出た。

f:id:akihiko810:20180727172843p:plain めっちゃうまかった

 ・夜9時に、主治医先生の仕事がひと段落したとのことで面談をした。先生と面談するのは12日ぶりくらいだ。いくらGWをはさんでいたとはいえ時間かかりすぎ。

先生は、9時に面会が終わったらやっと夕飯とのこと。激務だ…ご苦労様です。

面談の内容は、エビリファイという薬が朝夕2度に増えて、様子みてよかったら、来週末に外泊可からの任意入院にきりかえという流れとのこと。

来週末かい…。今週末(あさって)に外泊だと思って今日1日すごしてきたので、なんか緊張の糸がぷっつり切れた感じがした…。

退院のめどがつきそうなのはうれしいが、閉鎖病棟にいるのはもううんざりする。早く帰りたい。

普段夜はおかしを食べないのだが、ストレス解消の為ポテチとチョコをドカ食いして寝た。

 

ぼくの精神病院入院日記 続きます(たぶん)