筒井康隆『パプリカ』 読書会発表レジュメ
「夢(眠るときにみる夢)」がテーマの読書をするのだが、そこで発表する
筒井康隆『パプリカ』のレジュメ(要約と感想)を作ったので、ここに載せる。
筒井康隆『パプリカ』 紹介レジュメ
小説『パプリカ』
1993年に刊行された筒井康隆による長編SF小説作品。女性誌「マリ・クレール」に連載された。本作の発表後、筒井は断筆宣言をして、3年3か月の休筆期間に入った。筒井の断筆前の最後の小説作品。
2006年に今敏(こん さとし)監督の手によってアニメ映画化。
キャッチコピーは「私の夢が、犯されている」。
2008年の米国ニューズウィーク誌日本版が選んだ歴代映画ベスト100に『パプリカ』が、日本アニメから唯一選ばれるなど、評価の高い作品となった。
「パプリカ」あらすじ
夢に機器を通じて介入できる技術が発達した近未来の世界で、夢探偵を行う女性・パプリカの活躍を描く。
精神医学研究所に勤めるノーベル賞候補の研究者・千葉敦子は、夢探偵「パプリカ」として分裂症患者の夢に介入して、治療するセラピストでもあった。しかしある時、治療に必要なDCミニが何者かによって奪われる。事態は研究所内の権力闘争に紐づき、次第に現実は夢との境界を薄めてゆく。
登場人物
千葉敦子(ちば あつこ) / パプリカ
本作の主人公。研究所でも一目置かれているサイコセラピスト。美人。
他人の夢に侵入できる機械・PT(サイコセラピー)機器開発者のひとりで、ノーベル賞候補と言われる。
PT機器の小型版である「DCミニ」を使用し、別人格「パプリカ」の姿で患者の夢に潜り込み、悪夢の原因を探るなどの治療を行っている。
時田浩作に好意を抱いている。
時田浩作(ときた こうさく)
精神医学研究所の天才研究者であり、PT機器開発はほとんど時田によって担われた。ノーベル賞候補と言われる。
100キロを超える巨漢。精神的に幼いところがあり、オタクであるという自認がある。
物語ラストに、敦子と結婚した。
島寅太郎(しま とらたろう)
研究所の所長ならびにDCミニの開発担当責任者を務める、明朗快活な白髪の男性。人柄の良さから人望を集めているが、所内政治は苦手としている。
粉川利美(こながわ としみ)
パプリカによる治療を受けている刑事。悪夢に悩まされており、旧知の仲の島からDCミニによる治療を紹介された。
小山内守雄(おさない もりお)
研究所の職員。敦子に好意を抱いているが相手にされておらず歯がゆい思いをしている。また、優秀な時田に対して嫉妬心を抱いている。敦子らの開発したPT機器を忌まわしく思っており、何かにつけて妨害してくる。「ギリシャ彫刻のような」美貌の持ち主。
乾精次郎のことを崇拝しており、肉体関係にある。暴力で捕まえた敦子をレイプしようとするが、勃起せずに未遂に終わる。
乾精次郎(いぬい せいじろう)
研究所の理事長を務める老人(原作では副理事長)。アニメ映画版では下半身不随のため車椅子で移動している(原作は不明)。DCミニをあまり快く思っておらず、危険性を重視し開発中止も検討している。
島と社内政治的に対立している。子飼いの小山内とは肉体関係にある。本作のラスボス
原作と映画版との違い
原作では、敦子と時田浩作は相思相愛の関係にある。映画版では、あまり恋愛関係をにおわす描写はなく、物語のラストに明かされるのみとなっている。
原作では、敦子(パプリカ)の性的な描写がままある。小山内にレイプ未遂される場面など。映画版でも敦子が小山内に捕えられる、官能的なシーンがあるがマイルド。
映画版では、分裂症の悪夢のシーンとして、魑魅魍魎たちのパレードのような行進シーンが度々出てくるが、これは映画オリジナル。
ラストの展開は、原作とアニメでは違うが、原作の方がよりカオスに夢と現実がまじりあっている感じがあり、映画の方はよりカタルシスがある終わり方になっていた。
作品を通しての感想
エンタメ小説としてかなりスリリングで面白い出来の作品だと思った。パプリカというキャラもキュートでよい。さすがの筒井康隆の本領発揮という感じ。
そしてアニメ映画版はこれに輪をかけて傑作だと思った。アニメならではの場面の転換と、悪夢の視覚的再現がうまくいっている。今敏作品の最高傑作。