文芸的な、あまりに文芸的な

人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っている(谷川俊太郎)

「捏造の科学者 STAP細胞事件」より STAP細胞事件とは何か

「不正」がテーマの読書会をするのだが、そこで発表する

「捏造の科学者 STAP細胞事件」(須田桃子)より、 STAP細胞事件とは何か レジュメを作ったのでここに載せる。

2014年1月28日、小保方晴子理化学研究所)と笹井芳樹理化学研究所若山照彦山梨大学)の3人が、STAP細胞発見の記者会見を行う。

 

STAP細胞とは何か

STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)とは、動物の分化した細胞に弱酸性溶液に浸すなどの外的刺激を与えて再び分化する能力を獲得させたとして発表された細胞。万能細胞の一つとされたもの。

 

多能性細胞であるES細胞やiPS細胞との違い

ES細胞は受精卵の胚から取り出す(受精卵を使うので、倫理的に問題がある)

iPS細胞は分化し終えた細胞から作ることができるが、遺伝子操作が必要なので発がん性のリスクがある。

STAP細胞は、酸性の液体(いわく「酸っぱめのオレンジジュース」)につけるだけで作り出すことができるとされており、コスト面や腫瘍化の面でメリットが多い細胞とされた。

 

実験に使われたのは、万能性遺伝子が働くと緑色に発光するように遺伝子操作されたマウス。生後一週間の赤ちゃんマウスのリンパ球を30分ほど弱酸性の溶液に浸して刺激を与え、培養を続けると、「生き残った細胞」の中に緑色の蛍光を発する細胞が二日後から現われはじめる。弱酸の刺激に耐えて生き残る細胞は全体の25%、そのうちの30%が緑色に変化する。つまり最初の細胞のおよそ7%が、万能性遺伝子が働くようになるという。

(なお、この「緑色に光る」というのは、細胞が死ぬ歳に自然に放出される「自家蛍光」と呼ばれる光なのでは、と科学者の間で疑義がささやかれた。のちの理研の検証の結果、自家蛍光と区別できる緑色蛍光を発し、かつ万能性遺伝子が働いている細胞はできなかったと発表)

 

記者会見では「STAP細胞の、iPS細胞に対する優位性」が強調されたスライド絵が使用されており、「iPS細胞は発表の段階で80%だったが、STAP細胞はまだ20%」としながらも「iPS細胞を超える発見」であることを印象付けた会見となった。

 

 

STAP疑惑

会見から2週間たたないうちに、2ちゃんねるなどで、小保方氏の過去の論文やSTAP論文の画像の疑義が浮上。

過去の論文のコピペや、研究内容が異なる過去の論文からの画像の切り貼りなどの疑惑が報じられる。

2月18日、理研が調査委員会を設置。

この時点でのムードとしては、画像の間違いはあったのかもしれないが、STAP細胞の存在自体はまだ有力視する人も多かった。

ニコニコ動画の「STAP細胞 徹底解剖」と言う番組では

「作成法で、酸で刺激を与えるのは簡単だが、細胞を全滅させる直前で刺激を与えるのをやめるのは結構難しい。」

「こういった実験と言うのは研究ノートを見ればわかる」

「科学で捏造が生まれるほとんどのケースは、起こることが予想されていることを、実験的に先駆けて示そうとすることがほとんど。STAP細胞は誰も考えつかなかった、これまでの常識とは全く違うことでお手本がない。こういう結果は、捏造からは生まれない」

 

若山氏、衝撃の論文撤回呼びかけ

「自分がやった実験は正しくて、キメラができたのも事実。でも、小保方氏から渡された細胞が何だったのかわからなくなってきた」

 

4月1日、調査委員会が最終報告書を発表。2件で改ざん、捏造の研究不正を認定。小保方氏、不服申し立て。

 

小保方の反撃「STAP細胞はありまーす」

4月9日、小保方氏が記者会見。

STAP細胞の生成に200回以上成功している」

「生成のコツや生成レシピのようなものが存在している。今度の論文で書く」(その「レシピ」は結局公表されず)

ES細胞の混入は絶対にない」

「画像の切り貼りは、見栄えを良くしようと自己流でやってしまった。反省している」

 

不正確定

小保方氏は「調査委に渡したノート以外に2冊ある」としたノートは提出しなかったことが判明。

小保方氏の弁護団は実験ノートの一部を公開。「実験内容に照らし合わせればきちんと実験したことがわかる」としたが、ノートに「陽性かくにん!よかった」という記述やハートマークなど、通常の実験ノートにはみられない記述が物議をかもす。

 

5月8日、理研が小保方氏による捏造、改ざんを2件認定。

 

6月16日、若山氏が記者会見、第三者機関によるSTAP幹細胞の解析結果を発表。

STAP細胞ES細胞が混入、あるいはすり替えられた可能性。

若山「STAP細胞が絶対にない、とは明言できないが、STAP細胞があることを示す証拠はない。」

「小保方氏は、ES細胞を自由に使える環境だった」

 

7月2日、ネイチャーがSTAP細胞に関する2つの論文を撤回

 

8月5日、笹井氏自殺

 

調査委による報告書

「論文のストーリーに沿うようサンプルを操作した」のではとするも、

「小保方氏は「条件を揃える」という研究者としての基本原理を認識していなかった可能性が極めて高く」「どのようにサンプルを用意したかを含め、小保方氏本人の記憶しかない」として、意図的な捏造についてそれぞれ「認定できない」「確証を持つには至らなかった」

 

研究や不正調査に、1億4,500万円費やされた。