文芸的な、あまりに文芸的な

人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っている(谷川俊太郎)

プロレス雑誌「KAMINOGE」(かみのげ)vol.57 /ブル中野座談会が面白い

先日書店で、プロレス雑誌KAMINOGE」(かみのげ)vol.57 を立ち読みしたのだが、滅茶苦茶面白かった。思わず一時間以上立ち読みしてしまった(だったら買えよなのだが、そこまで金ないのだ…)。

あまりにも面白かったので、忘備録もかねて、覚えている範囲で少し紹介。プロレスにあまり詳しくない人向け。そもそも私はプロレス雑誌読むだけ(試合は特に見ない)のニワカオタクなのでご了承を。

KAMINOGE vol.57

KAMINOGE vol.57

 

 まずは、前田日明スーパー・ササダンゴ・マシンの対談。(表紙のふたり)

ササダンゴ・マシンといえば、DDTプロレスの煽りパワポ、プレゼンレスラーとして有名。最近テレビにもちょくちょく出てる。

logmi.jp

ササの中身は「お前平田だろ!」の平田ではなく(これは本家、スーパー・ストロング・マシン)、今や伝説のプロレス団体マッスル(お笑い色の強い、というか小劇場系の演劇をとりいれたようなパフォーマンスで、「プロレスを考えるプロレス」を掲げていた)の主催者だったマッスル坂井

テレビ番組「水曜日のダウンタウン」でササが「私のプレゼンはこちら!プロレス界で一番滑舌が悪いのは、実は前田日明」と、「滑舌悪いレスラー」の代表格である長州や天龍を押しのけて推薦したところ、ドッキリで前田本人が降臨し、ササダンゴを頭突きで制裁したらしい。その縁で二人の対談になったという。

前田がササに「(お前の煽りパワポの)DVDみたけどオチないじゃん」などと先制攻撃を仕掛け、ササはたじたじ。前田はササにくらわせた頭突きのことも「あれは音だけの奴だからそんなでもないよ。俺、たぶん頭突きはレスラーの中で一番うまい。痛いやつは額(ひたい)の正中線にやるんだよ。昔サイン求めてきたファンに頭突きしたら、膝から崩れ落ちたからね」とかます(笑)

前田はササを気に入ったようで「お前はもっとシモネタ磨けよ。俺は海外遠征したときに、向こうの人気レスラーが人気と下ネタ駆使して女抱きまくってたのから学んだもん。リングス時代(前田はリングスという総合格闘技団体を創設し、レスラー兼最高責任者をし、興行のプロモートも自身で行っていた)は、まず外人レスラーに下ネタで心つかんでから『日本で試合やればオンナとできるぜ!』と口説いて、団体に引き抜いてたんだから」と豪快なアドバイス。

ササが実家の会社の金型の話をすると(ササは実家の医療系金型会社の専務であり、兼業レスラー)、「今は金型も金属だけじゃなくて色々素材かえてるじゃん、セラミックスとか」と、ササが関心するほどなぜか金型に詳しい前田もみれる。「人件費安いからアジアに進出しなよ。ベトナムとか。日本人はモテるから」と会社経営にまでアドバイスするのは、さすが経営者。

そしてもうひとつ個人的に面白かったのが、全女(全日本女子プロレス)の女帝・ブル中野の座談会。ブルが経営するバー「中野のぶるちゃん」で、浅草キッドの玉袋ともうひとりプロレスライターで飲みながら、ブルの全女時代の昔話。

f:id:akihiko810:20160913023749j:plain 極悪同盟初期のブル

全女はやはり厳しい所で、よくも悪くもの「悪くも」の体育会系だったらしく、かなり苦労したようだ。

デビュー前の身分でありながら会長から直接指導をうけてたので、技はかなり上のレベルだった。前座試合なのに先輩たちが使う技を使ってたので(それがご法度だとは知らなかった)、先輩方からいじめやリンチされた。

新人時代は食べて体を大きくしなければいけないが、先輩の世話や興行の準備に追われて食べる時間が全くなく、移動バスのなかで隠れてゴミ箱から漁った先輩たちの残飯食ってた。

などの苦労話も相当に面白かったのだが、

やっとレスラーとして独り立ちできると思ったら、会社からヒール転向を告げられ、泣くほどショックだった。当時のヒールは日本社会の全員に嫌われることと同じで、シャバを捨てるのといっしょだったから。(これは本当にそうで、女子プロの「ヒールで人気」というのが確立したのは、もう少しのちの極悪同盟がプロレス以外でテレビに出だした頃、と私は認識してる。まぁ、「ヒール人気」は普通の人気とは意味合いが違うのだが…)

当時ファンの男とつきあってたが、ヒール転向したらその彼氏が別の女子レスラーにのりかえてしまった。

全女はタイトル戦でもピストル(シュートのこと。結果の決まったアングルではなくガチの試合)だった。さすがにアイドル人気が凄いクラッシュギャルズは負けさせるわけにはいかないのでプロレスだった。

全女の社長が、選手をひとりひとり部屋に呼び出して「あいつ(対戦相手やライバル)はお前の事嫌ってるぞ。お前を潰そうとしてる」と嘘を言って煽ってた。みんな十代でプロレス業界に入った世間知らずの女子なので、本気でそれを信じてた。だから相手の事が本気で憎くてそれが試合に出てた。

30歳前になると、どんなトリを張ってたトップスターでも露骨に第2試合に組まれて2軍扱いされる。後輩からも冷ややかな視線で見られ、否応なく引退のレール(空気)がひかれる。だからダンプなどのトップレスラーはその前に全女を離脱した。私が初めて、全女でその「定年」にひっかかることなく全女でトップを走った。

など、全女裏話が滅茶苦茶に面白かった。

そしてこの座談会読んで何より驚いたのが、ブル中野が今現在、現役の時からは信じられない美熟女だということ。これは知らんかった。

f:id:akihiko810:20160913033003j:plain お店のブログより

とそういうわけで、プロレス好きはもとより、「プロレス知らないけど何か面白いもの読みたい」という人にも、この「KAMINOGE」はぜひ買って読んでもらいたい。もちろんまずはお前が買えよ、という話なのだけど(苦笑)

あと機会があったら「中野のぶるちゃん」行ってみたいと思った。酒飲めないけど…  <了>