極私的・今年度ベスト5マンガ 2018
初めての皆さんはじめまして。そうでない方はお久しぶりです、タムラ昭彦です。
私はそれなりの漫画読みでして、(正確には数えていないものの)年間200冊ほどの漫画を読んでいるはず。
今回は年末にはまだ少し早いけれど、今年私が読んだ漫画2018・ベスト5を発表したい。(※私が今年読んだ漫画であって、今年発売された作品ではありません)
第5位
『詩人ケン』業田良家
あらすじ:
誰もが何かに飢えている現代に生きる詩人ケン。金も職もないが妻子はいる彼は、今日も言葉を探し求め詩を作る。ケンと彼を取り巻く情深きひとびととの交流を描く。
短評:
あらすじ:
人類は滅亡するために生まれてきたのか――――!?
世界は確実におかしくなっていた。2011年に人類発祥の地・ケープタウンに不思議な木が生えたときから…
強制的に「世界の終わり」を意識させられる人類…
刹那的な享楽にふける人…全てを諦め投げやりな生き方を選ぶ人…
全てが急速に変わり始めた世界の中で、変わらないことを選び絶望に挑む、家族の物語。
第3位
『月影ベイベ 』小玉ユキ (全9巻)
あらすじ:
伝統行事「おわら」を踊りつぐ町。東京から転入してきた蛍子は、町の伝統「おわら」を踊れるが 人前では緊張して踊れなくなってしまう。 そんな蛍子にひかれる地元の高校生、光。 どうやら、光の叔父と蛍子は昔からの知り合いらしいが、 2人は何も語らない。 小さな町に吹き込む、謎と秘密の風。 情緒と青春を瑞々しく描く、新しい小玉ワールド。
短評:
富山県のおわら踊りを題材にした、三角関係少女マンガ。おわらという超地味な素材なので、1、2巻はまぁまぁだったが、3巻でおじさんが不倫していたことが明るみになってからはめっぽう面白くなった。やはり少女漫画は「関係性」を描くのが上手いが、この作者は「かなわない恋の関係性」を提示するのがすごく上手い。主人公が「これが恋か」と胸がズキンとする場面は涙モノ。正統にして秀作の少女漫画だと思う。
第2位
『ミツコの詩』榎屋克優 (既刊1巻)
あらすじ:
女子高生詩人は今日も「紙以外」の何かに書いている。
校長の車に、トイレの壁に、教室の床に。
元詩人の国語教師は今日も苛立っている。
詩を履き違えた、その女子高生詩人に。
だから二人は詠い続ける。
互いの魂が正しいことを証明するためにーーー!!
短評:
詩の朗読バトル(通称詩のボクシング)がテーマの漫画。学校の窓ガラスから校長のベンツにまで辺り構わず自作の詩を書き付ける女子高生ミツコが参加している詩の朗読バトルに、プライドが高い元詩人の国語教師の吹抜が足を踏み入れていく…。 内容は渋く魂を叩きつけるかのよう。画も劇画調の重厚な感じなのが合っている。これは傑作漫画になる予感。とはいえテーマが地味なだけに、長期連作にはならないだろう。3巻くらいでがっと詰め込んでほしい。
第1位
あらすじ:
81歳、孤独な老人。46歳独身、介護職の女。27歳、特別養護老人ホームを「ある事情」でやめた青年。ぬぐい去れない痛みを抱えた3人の奇妙な恋が始まる――――。脚本家・小説家山田太一の小説『空也上人がいた』を、鬼才・新井英樹が漫画化
短評:
特養での罪の意識を抱える青年が、ある老人宅で介護を頼まれる。老人から京都の空也上人像を見てくるよういわれ…。 原作・山田太一、漫画・新井英樹。このタッグで面白くないわけがなく、文句なしの傑作であった。「傷のある人間同士の愛のあるセックス」というラスト場面は、やはり新井が好きそうなテーマで、この原作を漫画化するに際しての意気込みが感じられた。介護職のしんどさ、闇がしっかり描かれているのも、抒情派だけでなく社会派なドラマだと思う。この傑作原作にも漫画にも敬意を表したい。
骨太なテーマの漫画が好きなのでこのランクインとなった。どの漫画も必読の面白さである。
他、今年度のオススメ漫画は以下。ぜひ読んでもらいたい作品群である。
「大家さんと僕」矢部太郎
「淋しいのはアンタだけじゃない」吉本浩二
「寺島町奇譚」滝田ゆう
「含羞(はぢらひ)我が友中原中也」曽根冨美子
「春と盆暗」熊倉献
「みちくさ日記」道草春子
「オンノジ」施川ユウキ
「Sunny」松本大洋
「1122」渡辺ペコ
「海街diarly」吉田秋生
「Beautiful Sunset」小玉ユキ