文芸的な、あまりに文芸的な

人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っている(谷川俊太郎)

山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』 ~地方で窒息するサブカル人と俺の上京

先月の読書会の交換本でもらって読んだ。「地方郊外のダルさ」を描いたファスト風土小説としてはてなでもかなり話題になったので、これは読みたいと思っていたのでうれしかった。 小説短編集・山内マリコ『ここは退屈迎えに来て』 ここは退屈迎えに来て 作者…

ふみふみこ『ぼくらのへんたい』を読む ~変態する思春期

ふみふみこ『ぼくらのへんたい』(全10巻)。 ぼくらのへんたい(1) (RYU COMICS) 作者: ふみふみこ 出版社/メーカー: 徳間書店(リュウ・コミックス) 発売日: 2014/03/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 世間から見れば「変態」にみら…

第二十三回文学フリマ東京レポ ひとり反省会

第二十三回文学フリマ東京から一週間ほどたつので、忘れないうちにサークル参加の反省点を 文フリ当日の、我々のブース 全体的な感想 作る 制作期間は2か月半ないくらいだったが、私の担当(漫画論4つとマンガ2つ)は、漫画論に手間取って、いつものごと…

第二十三回文学フリマ東京「文化系女子になりたい」編集後記

作成した文芸同人誌『文化系女子になりたい』、紙面が尽きてしまったので、編集後記だけブログ上で発表。おまけコンテンツ。 ~~~~~ まずは、今回文芸同人誌『文化系女子になりたい』を購入してくださった方、私たちのブースに寄って下さった方、そして…

告知 ※文学フリマ東京(11/23)出展します。サークル「文化系女子になりたい」キ-13

文学フリマ東京(11/23 水・祝)出展します。 サークルは「文化系女子になりたい」キ-13 評論サブカルチャーのブースコーナーです。詳しくはwebカタログで c.bunfree.net 配布するミニコミは「文化系女子になりたい」3・4号 1冊100円のコピー本です。 …

アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』をみる ~死者に規定された生者たち

今回はアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、略称『あの花』。漫画ではなくてアニメだけど、漫画文学論でとりあげる。漫画版もあるしね。 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 (ジャンプコミックス) 作者: 超平和バスターズ,泉光 出…

ほったゆみ(原作)『ヒカルの碁』を読む。 ~死者は現在する。生者のなかに

今回は、ほったゆみ(原作)・小畑健(漫画)の『ヒカルの碁』。 唐突だが、私が道徳的観点、というより「人生の指標になる」という観点から「小学生が絶対に読むべき少年漫画」をいくつかあげるとしたら、「他者と内発的につながることーーそれが結果につな…

映画の興行収入と利益についての忘備録 吉田正樹「メディアのリアル」

吉田正樹「メディアのリアル」という対談本に、映画プロデューサ-の小滝祥平(映画『ホワイトアウト』のプロデューサー)との対談で、 メディアのリアル 作者: 吉田正樹 出版社/メーカー: プレジデント社 発売日: 2015/05/26 メディア: Kindle版 この商品を…

プロレス雑誌「KAMINOGE」(かみのげ)vol.57 /ブル中野座談会が面白い

先日書店で、プロレス雑誌「KAMINOGE」(かみのげ)vol.57 を立ち読みしたのだが、滅茶苦茶面白かった。思わず一時間以上立ち読みしてしまった(だったら買えよなのだが、そこまで金ないのだ…)。 あまりにも面白かったので、忘備録もかねて、覚えている範囲…

短歌研究新人賞・最終選考通過、候補作受賞しました(友人が)。 その2

前記事の続き。 短歌研究新人賞・最終選考通過、候補作受賞しました。友人が - 文芸的な、あまりに文芸的な さて、私が見せてもらって特に好きだな、うまいなと思った歌は、 作業着に集まる無数の小豆たち どんなに美しかろうと死は死 まるで毒でも入ってい…

短歌研究新人賞・最終選考通過、候補作受賞しました。友人が

私の友人が短歌雑誌「短歌研究」の新人賞で候補作を受賞した。新人賞(1名)、次作に次ぐ銅メダルで、応募500人のうちの8人くらいに残り、雑誌で選考歌人に1P半の選評が載せられた。これは快挙だ。 短歌研究新人賞候補作。ありがたいことです。誰一人…

夏目三久アナと有吉熱愛、そして私の大学時代

「怒り新党」で共演していた夏目三久アナと有吉の熱愛報道が出た。 夏目三久アナと有吉熱愛!すでに妊娠 番組きっかけ - 結婚・熱愛 : 日刊スポーツ 私がそのとき思ったのは「結局有吉かよ」であり、「あれから何年たったのか」であり、「でも大江アナがどっ…

浅野いにお『おやすみプンプン』を読む ~浅野いにおと、ポストモダンという憂鬱

友人から借りて読んだ浅野いにお『おやすみプンプン』。浅野いにおといえば「オサレサブカル漫画」の第一人者として若者に人気、一方で「サブカル臭いだけの薄っぺらい雰囲気漫画」として、いにお読者も「サブカル気取りのダサイ奴」扱いされてやり玉にあげ…

手塚治虫『地球を呑む』

手塚治虫『地球を呑む』の手頃な感想がweb上にないようなので書く。そこそこ分厚いハードカバーが、ブコフで百円だったので読んだ。 手塚の初の大人向け長編らしく、手塚は気合を入れて描いたのだろうか、話もエロい。『地球を呑む』の連載開始は68年、『…

紡木たく『ホットロード』を読む ~恋愛という”痛み”ーー彼女が歩む道の先にあるのは

今回は、私は男なのであまり読んだことのないジャンル、少女マンガからのご紹介、紡木たく『ホットロード』。 1986年から王道少女漫画雑誌『別冊マーガレット(別マ)』に連載され、コミックは(わずか全4巻ながら)700万部売り上げた作品。(たしか、当時…

綿矢りさのおっぱいがでかい 文学は死んだ  --を短歌にしてみる

今日はてな匿名ダイアリー(通称 増田)にこんな投稿があった。 「綿谷りさのおっぱいがでかい 文学は死んだ」。ただこれだけの一発ネタである。(綿谷は誤りであり、綿矢りさ が正しい) しかしこれ、投稿者が意図したのかどうかは知らないが、自由律俳句(…

文学フリマ 『文化系女子になりたい』編集後記 ~私が文章を書く理由

作成した文芸同人誌『文化系女子になりたい』、紙面が尽きてしまったので、編集後記だけブログ上で発表。おまけコンテンツ。 文芸同人誌『文化系女子になりたい』をお買い上げいただいた方に、厚くお礼を申し上げたい。(といってもこれ書いてる時点でどれだ…

業田良家『自虐の詩』を読む ~「人生には明らかに意味がある」、<関係性の履歴>と人生の意味

「このマンガは絶対に読む価値がある」 永井均『マンガは哲学する』でそう賞賛された、文字通り「人生において必読」の傑作。 マンガは哲学する (講談社プラスアルファ文庫) 作者: 永井均 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/08 メディア: 文庫 クリック:…

告知 ※文学フリマ東京(5/1)出展します。サークル「文化系女子になりたい」(ツー09)

今週のお題「私がブログを書く理由」 ということで、私がブログを書く理由。 このブログは主に漫画文学論を書いているが、それなりの文章(内容と分量)を書くのは面白いのだが、当然のことながらメンドクサイ。 何故に私はそんなめんどうなことをしているの…

女優・大後寿々花と、クンニ顔という概念

タイトルから分かるとおり駄文。 先日、深夜放送していた映画『桐島、部活やめるってよ』を観ていたら、吹奏楽部でサックスを吹いてる一人の女の子に目が留まった。 この女優誰だっけ…と思い検索したら、大後寿々花という娘らしい。『桐島~』にはヒロインの…

押見修造『惡の華』高校生編(7~11巻)を読む  ~破滅よりも、生きることに賭ける

前回記事押見修造『惡の華』中学生編(1~6巻)を読む に続き今回は『惡の華』高校生編。 惡の華(7) (週刊少年マガジンコミックス) 作者: 押見修造 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/03/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回は…

押見修造『惡の華』中学生編(1~6巻)を読む ~クソムシたちのプラトニックロマンス

惡の華(1) (週刊少年マガジンコミックス) 作者: 押見修造 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/10/17 メディア: Kindle版 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る 今回は押見修造『惡の華』。 「この漫画を、今、思春期に苛まれているすべ…

よしながふみ『愛すべき娘たち』を読む ~不完全な女たちと、愛すべき彼女たち

愛すべき娘たち (Jets comics) 作者: よしながふみ 出版社/メーカー: 白泉社 発売日: 2003/12/19 メディア: コミック 購入: 32人 クリック: 220回 この商品を含むブログ (323件) を見る よしながふみの、女性(娘)をテーマにした連作短編集『愛すべき娘たち…

宮台真司×二村ヒトシ『男女素敵化』講演会レポ in バレンタイン

www.france10.tv に行くために久しぶりに下北沢へ。 講演会は午後七時からなのでそれまで渋谷。バレンタインデーのため街頭にはチョコレートの仮装(アポロやなんとかチョコの箱ね)をしたギブミーチョコレート野郎達がちらほらいて、それがごちゃごちゃした…

古谷実『シガテラ』を読む ~毒を孕んだ日常のその先にあるものは…絶望か?あるいは希望か?

シガテラ コミック 全6巻 完結セット (ヤンマガKC (1361)) 作者: 古谷実 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/05/30 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは、古谷実『シガテラ』。古谷実の商業誌連載第5作目であり、 「笑いの…

ジョージ秋山『銭ゲバ』 ~社会はクソ、人は悪ズラ。銭ゲバは銭の夢をみるか?

今回紹介するのはジョージ秋山の傑作『銭ゲバ』 1970年に週刊少年サンデーに連載。ちなみに同時期、ジョージ秋山は少年マガジンの方で『アシュラ』を連載してた。こちらは食人描写もある。今の基準からみれば、というか当時の基準からみても、少年誌なのに容…

黒田硫黄『茄子』(1)を読む ~少女は日常を浮遊して生きる

茄子(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 黒田硫黄 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/11/12 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは黒田硫黄『茄子』。各話にナスが出てくるオムニバス短編集。 黒田硫黄はおそらく私の一番…