文芸的な、あまりに文芸的な

人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っている(谷川俊太郎)

このマンガを読むのだ

よしながふみ『フラワー・オブ・ライフ』を読む ~「正しくない」からこそ「正しい」、私たちの弱さ

『フラワー・オブ・ライフ』(全4巻)、今や大御所とも言ってもいい、よしながふみの少女コミックだ。 フラワー・オブ・ライフ (4) (ウィングス・コミックス) 作者: よしながふみ 出版社/メーカー: 新書館 発売日: 2007/05/25 メディア: コミック 購入: 6人…

極私的・今年度ベスト5マンガ 2018

初めての皆さんはじめまして。そうでない方はお久しぶりです、タムラ昭彦です。 私はそれなりの漫画読みでして、(正確には数えていないものの)年間200冊ほどの漫画を読んでいるはず。 今回は年末にはまだ少し早いけれど、今年私が読んだ漫画2018・ベス…

岡崎京子『pink』を読む ~愛と資本主義の物語。この消費社会で、愛は勝つのか

今回は、岡崎京子『pink』を紹介したい。 pink 作者: 岡崎京子 出版社/メーカー: マガジンハウス 発売日: 2010/07/29 メディア: コミック 購入: 4人 クリック: 54回 この商品を含むブログ (23件) を見る 89年というバブル景気の絶頂期に描かれた作品である。…

大傑作劇画・上村一夫『しなの川』。 再実写化するなら主役は誰?

とんでもない傑作漫画を読んだ。 どれくらい傑作なのかというと、私の「生涯で読んだ凄い漫画」ベスト2、3に食い込むのではないか、というレベルの傑作である。 自慢ではないが、私は32年の人生としては、結構な数のマンガを読んでいる(上には上がいるも…

田亀源五郎『弟の夫』を読む ~ゲイというマイノリティの物語に描かれる、<家族>という物語

田亀源五郎『弟の夫』全4巻。 ゲイエロ漫画界の巨匠が初めて一般誌で連載した、ゲイ男性と同居するホームドラマだ。 弟の夫 : 1 (アクションコミックス) 作者: 田亀源五郎 出版社/メーカー: 双葉社 発売日: 2015/06/12 メディア: Kindle版 この商品を含む…

極私的女優論:マンガ『私の少年』と、「私の妹」にしたい杉咲花

高野ひと深『私の少年』というマンガがある。 30歳独身恋人なしのOLが、ふとしたことから美形の少年に、夕方だけサッカーを教えることになることになり、そこから二人の交流が始まるマンガである。そこでは独身OLお姉さんと少年の、親子でもなく姉弟でもなく…

こうの史代『この世界の片隅に』を読む ~戦時下という非日常でみつける<日常という奇跡>

こうの史代『この世界の片隅に』。 今アニメ映画が大ヒット中である。キネ旬の今年の邦画第1位にもなった。でも私はまだ映画は未見だ。年末年始で支出が多いから、映画代がないのだ(苦笑) この世界の片隅に 上 (アクションコミックス) 作者: こうの史代 …

ふみふみこ『ぼくらのへんたい』を読む ~変態する思春期

ふみふみこ『ぼくらのへんたい』(全10巻)。 ぼくらのへんたい(1) (RYU COMICS) 作者: ふみふみこ 出版社/メーカー: 徳間書店(リュウ・コミックス) 発売日: 2014/03/07 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 世間から見れば「変態」にみら…

アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』をみる ~死者に規定された生者たち

今回はアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』、略称『あの花』。漫画ではなくてアニメだけど、漫画文学論でとりあげる。漫画版もあるしね。 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。 1 (ジャンプコミックス) 作者: 超平和バスターズ,泉光 出…

ほったゆみ(原作)『ヒカルの碁』を読む。 ~死者は現在する。生者のなかに

今回は、ほったゆみ(原作)・小畑健(漫画)の『ヒカルの碁』。 唐突だが、私が道徳的観点、というより「人生の指標になる」という観点から「小学生が絶対に読むべき少年漫画」をいくつかあげるとしたら、「他者と内発的につながることーーそれが結果につな…

浅野いにお『おやすみプンプン』を読む ~浅野いにおと、ポストモダンという憂鬱

友人から借りて読んだ浅野いにお『おやすみプンプン』。浅野いにおといえば「オサレサブカル漫画」の第一人者として若者に人気、一方で「サブカル臭いだけの薄っぺらい雰囲気漫画」として、いにお読者も「サブカル気取りのダサイ奴」扱いされてやり玉にあげ…

手塚治虫『地球を呑む』

手塚治虫『地球を呑む』の手頃な感想がweb上にないようなので書く。そこそこ分厚いハードカバーが、ブコフで百円だったので読んだ。 手塚の初の大人向け長編らしく、手塚は気合を入れて描いたのだろうか、話もエロい。『地球を呑む』の連載開始は68年、『…

紡木たく『ホットロード』を読む ~恋愛という”痛み”ーー彼女が歩む道の先にあるのは

今回は、私は男なのであまり読んだことのないジャンル、少女マンガからのご紹介、紡木たく『ホットロード』。 1986年から王道少女漫画雑誌『別冊マーガレット(別マ)』に連載され、コミックは(わずか全4巻ながら)700万部売り上げた作品。(たしか、当時…

業田良家『自虐の詩』を読む ~「人生には明らかに意味がある」、<関係性の履歴>と人生の意味

「このマンガは絶対に読む価値がある」 永井均『マンガは哲学する』でそう賞賛された、文字通り「人生において必読」の傑作。 マンガは哲学する (講談社プラスアルファ文庫) 作者: 永井均 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2004/08 メディア: 文庫 クリック:…

押見修造『惡の華』高校生編(7~11巻)を読む  ~破滅よりも、生きることに賭ける

前回記事押見修造『惡の華』中学生編(1~6巻)を読む に続き今回は『惡の華』高校生編。 惡の華(7) (週刊少年マガジンコミックス) 作者: 押見修造 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2013/03/29 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回は…

押見修造『惡の華』中学生編(1~6巻)を読む ~クソムシたちのプラトニックロマンス

惡の華(1) (週刊少年マガジンコミックス) 作者: 押見修造 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/10/17 メディア: Kindle版 購入: 1人 クリック: 1回 この商品を含むブログを見る 今回は押見修造『惡の華』。 「この漫画を、今、思春期に苛まれているすべ…

よしながふみ『愛すべき娘たち』を読む ~不完全な女たちと、愛すべき彼女たち

愛すべき娘たち (Jets comics) 作者: よしながふみ 出版社/メーカー: 白泉社 発売日: 2003/12/19 メディア: コミック 購入: 32人 クリック: 220回 この商品を含むブログ (323件) を見る よしながふみの、女性(娘)をテーマにした連作短編集『愛すべき娘たち…

古谷実『シガテラ』を読む ~毒を孕んだ日常のその先にあるものは…絶望か?あるいは希望か?

シガテラ コミック 全6巻 完結セット (ヤンマガKC (1361)) 作者: 古谷実 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/05/30 メディア: コミック この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは、古谷実『シガテラ』。古谷実の商業誌連載第5作目であり、 「笑いの…

ジョージ秋山『銭ゲバ』 ~社会はクソ、人は悪ズラ。銭ゲバは銭の夢をみるか?

今回紹介するのはジョージ秋山の傑作『銭ゲバ』 1970年に週刊少年サンデーに連載。ちなみに同時期、ジョージ秋山は少年マガジンの方で『アシュラ』を連載してた。こちらは食人描写もある。今の基準からみれば、というか当時の基準からみても、少年誌なのに容…

黒田硫黄『茄子』(1)を読む ~少女は日常を浮遊して生きる

茄子(1) (アフタヌーンコミックス) 作者: 黒田硫黄 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/11/12 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る 今回紹介するのは黒田硫黄『茄子』。各話にナスが出てくるオムニバス短編集。 黒田硫黄はおそらく私の一番…